2009年05月07日

何語が楽か?

「…お祖父さんはな、ラテン語の絶対奪格が最後まで分からずじまいだった。つまり、頭が悪かったんだな、君のお祖父さんという人は。ところが、君のお父さんは、その壁ぎわの向こうの机にいつも坐っていたんだが…、ま、似たり京都 エステ寄ったりというところだった。しかしだ、わしの考えで、これだけは絶対だと思うんだが、ね…コリー君や…君は…あーム…三人のうちではズバ抜けて頭が悪いよ!」
 ゴーッと起こる哄笑。
  -----ヒルトン『チップス先生さようなら』

「日本語を勉強して、何が一番難しかった?」とときどき聞かれる。
のみこむのに苦労した日本語は、佃煮にするほどあった。例えば、「以後」と「以降」と「以来」を一体どう使い分けたらよいのか。また、難しい四字熟語を一生懸命覚えても、「適度」に、いや「適当」に、いな「適切」に使えるようになるのに、さらに一進一退、試行錯誤の月日を要した。ただ、「一番難しかった」とくると、ぼくの頭にまっすぐ浮かぶのは「月極」だ。
  -----アーサー・ビナード「ゲッキョク株式会社」『日々の非常口』(朝日新聞社)




Posted by nicoxxx1116  at 15:15